文明の踏み分け道で考える―北川フラムと“アート”を語る レポート 第8回「動いていく地域と芸術」 ゲスト:苅部直
2014年10月24日(金) クラブヒルサイドサロン

「北川フラムと“アート”を語る」セミナーシリーズ第8回目は日本の思索者たちの軌跡をたどり、政治思想史研究に新たな視座を切り拓いてこられた苅部直さんをゲストにお迎えしての対談。
まず最初に北川さんは来年にひかえる大地の芸術祭、そしてこれまでの試行錯誤の連続のなかで浮上してきた問題点と課題について報告し、そこで改めて地域の人たちの目に見えるような里程標が必要だと述べた。そのことと関係して北川さんはサポーターこへび隊との勉強会を始めたところだいう。その勉強会で注目したのが丸山真男の著作でその研究者である苅部さんに今回の対談を依頼したと語る。

苅部さんは以前、大地の芸術祭を体験し、アーティストが越後妻有に入り制作することで、地元住民だけでなく、アーティストの作風にも変化が見られたことを述べた。また苅部さんは現代アートという自分の予想を超えたものと付き合おうとする態度が作られることで、住民のまちづくりに対する主体性も形作られるのではないかという見解を示し、現代アートとまちづくりの組み合わせは、丸山真男のいう他者意識と市民意識の連関性を彷彿とさせるものがあるとした。
今回の対談では官民共同で進める今後の地域づくりが国内外の大きな枠組みの動向に左右されず、また回収されない中間領域をいかに作っていくのかという問題を巡って終始意見が交わされた。冒頭の北川さんの勉強会にふれて、苅部さんが「中間領域でものの考え方を豊かにしていく」と言われたことはとても印象的であった。