人生に大切なことはすべて絵本から教わった レポート 第7回 「子どもという不思議」(最終回)
2012年6月9日(土) ヒルサイドバンケット

クラブヒルサイド設立以来、足かけ4年にわたった開催された末盛千枝子さんのセミナー「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」の最終回が行われました。あいにくの雨でしたが、最後ということで詰めかけたお客さまで会場は満員となりました。テーマは、「子どもという不思議」。ご家族とのエピソード、お子さんたちの子ども時代の大切な記憶、センダックやエリック・カールのお話など、最終回にふさわしい、心にしみるような哀しさと温かさがにじむエピソードをたくさんお話しくださいました。
ふたりの息子さんが小さかった頃のエピソードからは、お父さんが突然亡くなったときのこんなお話。「下の息子はそのとき小学校1年生でしたが、〈ぼくのパパなのに〉と言って泣いたんです。ぼくのパパなのに……これ以上の表現は、大人にもできないと思います」。末盛さんは、子どもたちはいろいろなことをちゃんとわかっていると語ります。

5月に亡くなったモーリス・センダックについては、自身が同性愛者であることを両親が亡くなるまで隠し、苦しみ続けたというエピソードを取り上げ、『かいじゅうたちのいるところ』や『うさぎさん手伝ってほしいの』などの絵本には、彼が両親に対して抱いていた深い思い、特に、子どもが母親に対してもっているとても温かい気持ちが表現されていると紹介されました。

最後に、NHKの東日本大震災復興支援プロジェクトでつくられた、「花は咲く」という歌の紹介があり、被災地にゆかりの深いアーティストやスポーツ選手など多様な人びとが歌うこの曲を会場で流しました。「“いつか生まれる君のために”、そして“いつか恋する君のために”、“わたしたちは何を残しただろう”。この歌詞は、絵本そのものだと思うんです。こういう時代に、絵本になにができるかと考えたとき、やはりこれに尽きると思います」。
セミナー「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」は、今回で終了となりますが、「3.11絵本プロジェクトいわて」とのつながりなどを通して、クラブヒルサイドは、今後も末盛さんの活動を応援していきたいと思います。このセミナーをきっかけとして誕生した「末盛千枝子ブックス」(現代企画室)からは、本セミナーをまとめた「人生に大切なことはすべて絵本から教わった2」および、絵本プロジェクトの記録集が刊行予定です。また、末盛さんの手がけた絵本の復刊プロジェクトも始まりました。
数々の出会いと実りを生んだこのセミナーシリーズに参加してくだった方々に、この場をかりてお礼申し上げます。