人生に大切なことはすべて絵本から教わった レポート 第3回「いま、読みたい絵本」
2011年10月22日(土) ヒルサイドバンケット
2011年に再開してから、これまで対談形式で行われてきたセミナーですが、今回は久しぶりに末盛さんおひとりにお話いただく会となりました。

2009年5月に末盛さんが岩手に移住されて後、3月11日の震災に遭われた末盛さんは、被災地の子どもたちに絵本を届ける「3.11絵本プロジェクトいわて」を主宰されています。10月14日現在、梱包を空けた荷物58,009個、本の冊数231,717冊、配布済みの地域178箇所、すでに配布した本の冊数69,855冊。ボランティアの方がたを中心に、絵本の仕分け、移動図書館車「絵本カー」での配布、読み聞かせが行なわれ、今日も被災地に絵本が届けられています。

そんな活動をされている末盛さんが「いま、読みたい絵本」としてご紹介くださった1冊目は、ご自身も大好きだという絵本、谷川俊太郎さん・文、長新太さん・絵『わたし』でした。易しい文とユーモラスな絵で「わたし」の存在が描かれるこの絵本、その冒頭を朗読してくださりながら、「『わたし』に描かれているような存在がすべてなくなるということ。ほんとうに大変なことだと思います。」と末盛さんは語られます。
2冊目は、レオ・レオニ『フレデリック』。「こういう大変なときだからこそ詩人や芸術家といった人たちの出番ではないか」と言われる末盛さんが、そのメッセージを伝えてくれる本として真っ先に挙げられた絵本です。
絵本のほかには、作家であり夫でもあった吉村昭さんとの最期の日簿を綴った、津村節子『紅梅』。同じ津村節子さんの著書では、末盛さんの名づけ親でもある彫刻家・高村光太郎さんと妻・智恵子さんのふたりの愛情が描かれた『智恵子飛ぶ』をご紹介くださいました。

そして、『幸福の王子』『わがままな大男』と、子どもたちに美しいお話を残しながらも、人生の歯車を自ら狂わせてしまったことから、2度と自分の息子たちに会うことができなかった英劇作家・オスカー・ワイルドのお話。人生の悲哀を語られながらも、彼の死後、その愛情がしっかりと息子へと届けられるまでを一連の物語として伝えて下さいました。