目利きが語る“私の10冊” 第17回 東浩紀 レポート
2011年10月24日(月) ヒルサイドライブラリー
昨年末には、自ら会社を設立し、新しい時代の言論誌『思想地図β』を刊行、また処女小説『クォンタム・ファミリーズ』では第23回三島由紀夫賞を受賞するなど、ゼロ年代を牽引する批評家・小説家として活躍する東浩紀さんの登場です。

震災の影響で延期となった本セミナー、「震災後ならばまたちがう選書になっていたかも」ということでしたが、以前に選書した10冊についてお話しいただきました。
これからの社会を考えていく上で参考になるということで選ばれた10冊は、SF小説から5冊、思想関連の書籍から5冊という内訳。
アイザック・アシモフ、フィリップ・K・デック……と、SF小説の歴史をたどりながら、語られる言葉の中には「オタク」「情報化社会」「高齢化」「格差社会」と今日的なタームがちりばめられます。
東さん自身が、すべてのジャンルを含めて、一番読んでいて、また尊敬している作家だという小松左京さんの作品からは『神への長い道』をセレクト。小松作品については、近日、東さんが編集を手がけられた選集が河出書房新社から出版されるそう。

残る5冊は、「政治とはなにか」ということをテーマにした選書。
政治的であること、または、政治的でないこととはどういうことなのか――今一度、「政治」という概念が意味することをその根本から問いを改めなければ、立ち行くことはできないのではないかと東さんは言います。
カール・シュミット、ハンナ・アーレント、ロバート・ノージック、リチャード・ローティといった政治思想家・哲学者の著作が挙がりました。
「技術の発達がうんだ今日の情報環境は、残念ながら人々の頭をよくはしないし、人と人とをうまくわかり合うようにはしてくれない。でも、現代では、戦争の映像が世界中に配信されることで、遠くにいる他者もが哀れみの情を抱く。そういったことにこそ可能性があるのではないか。」
ツイッターでの発言やニコニコ動画の配信、本の出版からその流通のシステムまでと、言論そのものだけでなく、社会のありかた、その枠組みから変革を起こし、活動を継続されている東さん。語られる言葉ひとつひとつが刺激となり、会場の熱気が呼応する、場のテンションにみちた時間となりました。