新津保建秀写真スクール「見えないものを撮る」 第2回 レポート
2011年6月18日(土) アネックスB棟

最初のゲストに永井一史さんをお迎えし、いよいよ課題をめぐる授業がスタートしました。永井さんからの課題は、〈After 311の「気配」を撮る〉。企業と社会の橋渡しともいえる「広告」。その最前線で活躍する永井さんにとって、「広告」をつくるプロセスは、常に言葉によって掘り起こす作業と一体だと言います。今回の課題では、写真と同時に背後にある考え方も提示することが求められました。

自分は震災で“何を感じ”“何を考えた”のか。“これから変わっていくものは何か”―。
バックグラウンド、世代も異なる26人の生徒による作品は、実に多種多様でした。最小のコミュニティである家族の重層化された肖像、変わらない日常に浮かび上がる死の予感、農家で自ら収穫した被曝した野菜を使ったおいしそうな料理、3.11後の膨大な数の報道写真、夜の散歩で発見した木々の緑の生命力―。

震災を自らに問いかけるひとりひとりのプレゼンテーションに、永井さんと新津保さんは実に丁寧にコメントしてくださいました。全体の講評で永井さんが指摘されたのは、コンセプトや感覚が、「表現」のレベルにまで到達しきれていない、ということ。震災に対する批評や実感を、抽象化する作業の必要性でした。一方、新津保さんが強調されたのは、量が質に転化するといること。制作は、実作業と検証が両輪の輪であり、それらを圧倒的な作業量の中で身体化していくことの重用性でした。
予定の3時間を1時間近くオーバーしてのお二人の真摯な講評に、生徒の皆さんも感激していた様子。
次回は、音楽家・渋谷慶一郎さんをゲストに迎えての〈「音」を撮る〉です。