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目利きが語る“私の10冊” 第16回 伊東豊雄 レポート

2011年6月15日(水) ヒルサイドライブラリー

 東日本大震災を機に、隈研吾、妹島和世、内藤廣、山本理顕各氏と共に「帰心の会」を立ち上げられた伊東豊雄さん。被災地での活動を通してあらためて考えた建築・建築家の役割について、3年前にヒルサイドライブラリーのために選んでくださった本を参照しながら、お話しくださいました。

 仮設住宅に集会所「みんなの家」をつくろうと提案されている伊東さん。それは、被災地にささやかな“メディアテーク”をつくることだと言います。人が集まる場に形を与えるのが建築家であるならば、そここそが建築の発生の場となりうるのではないか。伊東さんは、多木浩二著『生きられた家』を紹介しながら、“住む人としての自分”と“建築をつくる自分”という二人の自分の間で対話を続けることこそが、新しい建築の可能性を開くのだ、と語りました。

 建築をゼロから考えること―。それは、伊東さんが常に自らに課していることでもあります。磯崎新『建築の解体―1968年の建築情況』は、主題が不在となり、建築が内向し抽象化する時代に、批評性を武器に新しい建築のあり方を模索した“つくらない建築家”たちを考察した名著。60~70年代の建築情況を参照しながら、伊東さんは、批評性のないまま抽象化に進む現代の建築の傾向に疑問を呈しました。

目利きが語る私の10冊 伊東豊雄

近代主義の失敗ともいえる今回の震災。近代主義とは異なる思考による新しい建築、まちづくりを構想するヒントとして、伊東さんが紹介したのは、中沢新一(文化人類学者)、武満徹(作曲家)、土屋恵一郎(能研究者)、セシル・バルモンド(構造エンジニア)といった人たちの本でした。武満徹著『音、沈黙と測りあえるほどに』から引用された「私は共同の作業を愛する。個を殺すことで何かが浮かび上がる」という言葉は、「帰心の会」において伊東さんが掲げる、「批判をしない」「〈私〉を超えたところで何ができるか」というスタンスと響きあうものではないでしょうか。

 この春からスタートした「伊東塾」の活動も含め、建築を志す人々を鼓舞し続けてこられた伊東さん。その「ゼロからの志」は、セミナー会場を埋めた若い聴衆をも静かに揺さぶりました。

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