人生に大切なことはすべて絵本から教わった レポート 第1回「良寛とフランチェスコ ― 大正デモクラシーがもたらしたもの」
2011年6月11日(土) ヒルサイドプラザ
2008年度、大好評を得た人気セミナーシリーズ「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」が、2年ぶりに再開されました。昨年3月、同シリーズをまとめた著書の出版記念会以来の末盛さんの登場です。昨年5月に東京から盛岡に拠点を移された末盛さん。3.11の震災で東北新幹線が不通となったため4月に予定していた第1回がキャンセルとなったため、今回が最初のセミナーとなりました。

冒頭、現在末盛さんが取り組んでおられる「3.11絵本プロジェクトいわて」のご報告をいただきました。被災したこどもたちに絵本を届けたいという思いから、これまでのご経験のもと、真っ先に立ち上げられた絵本プロジェクト。これまでに届けられた22万冊以上の絵本と、それぞれに込められた送り主からのメッセージ、現地におけるエピソード等をお話しいただきました。(絵本プロジェクトについては、末盛さんのリレーエッセイにも報告されています。)
アートディレクター、北川フラムさんをゲストに迎えての対談は、彫刻家・舟越保武氏(1912-2002)、良寛研究家・北川省一氏(1911-93)という同時代を生きたおふたりのお父さまのお話を中心に進んでゆきました。

「長崎26殉教者記念像」を日本最高のパブリックアートと絶賛する北川さん。スライドを使いながら、抜群のデッサン力に支えられた保武氏の彫刻の魅力と、美しい肖像彫刻で知られる氏のありえたかもしれない抽象彫刻の可能性等、舟越保武論を展開。それを受けて、末盛さんが、お父さまとの生活、あるいは作品をめぐるエピソード等を語られました。

「若く美しいダミアン神父より、らい病になってからのダミアン神父のほうが美しい」「レンブラントは最高だ」といった言葉を日常的に家族に伝え、「自分は職人だから」と、社会の動きに対して意見することを控え、コツコツと作品をつくり続けた保武氏。一方、労働運動や農民運動に身を投じ、家に常にいることなく、ふらりと帰ってきては、広辞苑やその他の読み物などを土産のように持ち帰ってくれたという省一氏。
高村光太郎さんが名付けである「千枝子」という名前、ノルウェー語で「前進」を意味する「フラム」という名前についても、名を贈られたおふたりそれぞれが、思いをお話しくださいました。