たべるのだいすき 京都 天婦羅BAR亀亀 RELAY ESSAY 007

- 北川一成
- PROFILE
Date : 2012 / 01 / 30
毎年夏、講義で一週間ほどだが賀茂神社の近くにある京都府立大学へ行く。京都についたら、必ずといっていいほど通う天婦羅屋さんがある。お店の名前は「亀亀」。七人も入ればいっぱいになる、カウンターのみのとても小さなお店。店主の亀山学さんがその日ご自身で仕入れてこられた食材を、客との間をみて揚げていってくれる。
この夏は、いつもお世話になっている府立大学の河西先生と京都伏見の蔵元「月の桂」増田德兵衞商店14代目増田德兵衞さんのお子さん達、そして私の長男長女で行った。これでもう満席。やっぱり亀亀さんの揚げたての天婦羅は美味しかった。亀亀さんでのもうひとつの楽しみは亀山さんがストックしている「月の桂」だ。京都のお酒は京都でいただくのが何よりだとしみじみ感じて祇園の夜に消えてゆく私だが、この日は子供たちがいたのでやめました。
そしてその秋、写真撮影のディレクションで一泊二日で京都に行った。ことあると撮影は新津保建秀さんにお願いする。何故なら写真がうまいからだ。うまい写真家と組めば仕事は楽しくて楽だからすぐ仕事は終わる。その日も初日の撮影は順調で、まだ日のあるうちに予定を終えた。それはまだ16時半頃だったから、どこもお店は夜の営業の支度中で空いていない。けれどもいい仕事を終えて(私はそばにいて、ああだこうだとえらそうに指示してただけだが)なんだかお酒が呑みたくなった。
その日は19:00からクライアントさんとロケスタッフとの交流会でお店を取っていただいてたが、まあこのあとホテルにもどっても暇だしと思って亀亀さんにお電話した。あんのじょうお忙しそうな様子だった。けれどもそこはご安心と、私は良い客なので、だいたいどこに何があってどうだかわかるから、それとお酒は調理の必要はないから大丈夫とお話ししてもうすぐそばまで来てたから電話を切って、すぐその亀亀さんに入った。
お店に入るとカウンターテーブルにはまだ支度中の美味しそうな食材が置いてありました。先ずはカウンターテーブルのはじっこを二席分使わせてくれれば充分なのでとお願いして、座った。店主の亀山さんは快く?歓迎してくれて、先ずはギネスと一番搾りをハーフ&ハーフで冷やしたジョッキに注いでくださいなとビールを頼んだ。労働のあとのビールはすごく旨い。一緒についてきたうちのスタッフは恐縮気味でかわいそうだったので「なに!気にするなよ」と声をかけてやったけど、亀山さんにわびていた。うちのスタッフの気を取り直してやるためにも私は二杯目のお酒に月の桂「柳」を頼んだ。亀山さんも私もこの「柳」が大好きだ。京都のお酒は京都でいただくのが何よりだよ_と私はバカのひとつ覚えのように、美味しい「柳」を呑んではうなった。三杯目にこんどは月の桂「にごり酒」を頼んだ。月の桂さんといえば「にごり酒」の元祖であります。先代の13代目増田德兵衞さんが清酒「にごり酒」を日本で最初に発売されました。やっぱり、「にごり酒」を醸させたら月の桂が日本一だねえ!と一口呑んでまた一口呑んで、しみじみうなった。そうのこうの一人で楽しんでいるうちに、(スタッフはまだかわいそうに恐縮ぎみだったみたいだが)天婦羅の油に火が入ったのか、その新しい油のいい香りが漂ってきた。ですから、私はその日の初揚げの天婦羅をいくつかいただいた
すると突然携帯電話が鳴ってきた。もう19:00じゃないか!!慌てた私は亀山さんに「このお店!今から20人くらい入れますか?」とたずねたら、もっと慌てたうちのスタッフが「亀亀さんは七人までです。それにもう別のお店を予約してて、何より皆さん待ってますよ!!」とちょっとイライラしていたので、とっても怖いからお愛想をお願いして帰った。亀山さんはとにかくいい人だった。今度京都に来る時も必ず寄るから待っててね!と丁寧にご挨拶をして、予約のお店へまっしぐらに走った。
つづく
天婦羅BAR「亀亀」
Tel. 090-5884-9896
京都市中京区富小路四条上ル 四富会館1階
清酒「月の桂」醸造元(株)増田德兵衞商店
Tel. 075-611-5151
京都市伏見区下鳥羽長田町135